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まだまだ必要とされているイラクの教育支援

まだまだ必要とされているイラクの教育支援

十分でないイラクの教育環境

イラク政府の教育インフラに対する支出は十分であるとは言えません。

例えば、現在学校に通っていない200万人のイラクの子供たちに学習の機会を確保し、適切な学校で過密なく生徒が学習できるようにするには、イラク全土でさらに8000校以上の学校が必要な現状です。他にも、カリキュラムや教材の改善、充実した教員研修の提供、学校補修、新校舎建設、課外活動の充実化など、多くの課題があります。さらに、クルディスタン地域では、モスルやシンジャールなどのイラク他地域からの国内避難民やシリア難民などを多く受け入れており、さらなる支援が必要とされています。

IVYでは校舎建設・補修という物理的な支援のみならず、教員研修の実施によるソフト面での支援など、学校環境を多様な側面から支援する事業をしています。この両側面からの支援が相乗効果を生み出し、より大きいインパクトのある事業が実施できていると考えています。また、支援を実施することは、学校外での子どもたちの生活や地域社会の教育への関心を向上させることにもつながっています。

支援した学校の様子

アルマーリ小学校・女子中学高等学校

2022年度に支援を実施した、国内避難民が通うアルマーリ小学校・女子中学高等学校。

床が外れドアや窓がない、古いプレハブ教室で学習せざるを得ない状態であったため、新しい校舎を建設し、さらに教員研修を実施しました。この新しい学習環境の形成という取り組みにより、子どもたちと教員の学習への意欲ややる気を高め教育の質が向上し、定期テストの平均点が向上し、中退する生徒数が減少し、入学する生徒数が増加したという成果が出ました。

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アルサディーク小学校

2023年度に実施した事業では、アルサディーク小学校に13個の新たなプレハブ教室を設置しました。

新しい環境での学校生活が始まった後、教員からは、「電気が通り窓とドア、換気扇があり、新しい机とホワイトボードが設置された新しい教室で心機一転できた。教師としてしっかり生徒の力を高めていこうと思うようになった」との声が聞かれました。学習環境を整えることで、教員や生徒に対して心理的にも良い影響を与えています。教員研修で学んだ生徒とのコミュニケーションの取り方や、グループワークを使用した学習など、教員の新たな試みが日々のモニタリングから観察されています。生徒からも、「学校に来るのがより楽しみになった」との声が聞かれました。

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アルエルムナーファ第2小学校

国内避難民の生徒を受けて入れているアルエルムナーファ第2小学校では、4つの新しいプレハブ教室を設置しました。

事業実施前は、増加する生徒数に教室の数が追い付かず、子どもたちは、1週間に5日間ではなく3日間だけしか学校に行くことができませんでした。しかし、この学校に 4 つの教室を提供したことで、子どもたちが毎日学校に通うことができるようになりました。

このように、イラクには日本では常識となっている週5日学校に通うということが当たり前になっていない学校が多くあります。新しい学習環境を整備するのみならず、このように学校の抱える問題を少しでも解決するような事業を調査の上で立案・実施しています。

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教育支援で大切にしていること

私がイラクで教育事業を行う際に、一番大切にしていることは、とにかく学校に足を運び、学校の現状を直接把握し、子どもたち、先生、保護者の声に耳を傾けることです。実際に様子を見ることで、見えてくるニーズ、一見表立っては表れていないが裏に隠れている根本的な問題やその原因を見つけることができます。

イラクでは、いまだに教育支援のニーズが高い一方で、長期化する支援期間に対応しきれず、多くのドナーが撤退し始めています。そのような中でも、IVYの強みである多角的な教育支援を今後も継続していきたいと考えています。

2024年は現時点で継続事業を含め5事業を実施ししており、校舎の補修や建設などの教育環境整備や教員の能力強化研修などを行っていきます。

(イラク現地事業統括 齋藤喬)

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