教育支援

 


シリアとイラクの子どもたちを学校へ


 

 

 

2011年3月に起きた反政府デモから拡大したシリアの内戦。クルド自治区

2014年1月以降、イラクまで勢力を広げる武装勢力、イスラム国。

 

国連によると、シリア難民・国内避難民*の数は1000万人を越え、イラク北部のクルド自治区へ逃れる人々も24.5万人に達しています。また、14年6月以降、イラク国内でも武装勢力から逃れるために300万人を超える国内避難民が発生しています。

 

*「難民」とは国境を越えて外国に避難する人々のこと、「国内避難民」とは国内で別の地域へ避難する人々のことをさし、使い分けられています。

 

 


 

教育支援のきっかけ

 

IVYは、2013年9月よりジャパン・プラットフォーム(JPF)の一員として、イラク共和国クルド自治区でこれらの方々へさまざまな支援を行ってきました。

 

その中で見えてきたのは、難民・国内避難民となった子どもたちが長期間、学校へ通えないまま放置されている状況でした。

 

 

そこで、教育省に働きかけ、第1段階は補習校をつくること、第2段階は補習校を公立校に昇格してもらい、履修単位を取得できるようにすること。この活動を通じ、これまでシリア難民のための補習校1校(ガラナワ補習校)、公立校1校(コバニ小学校)、イラクの国内避難民のための補習校1校(IVY補習校)、公立校1校を開校することができ、延べ1,738人の子どもたちが教育を受ける機会を得られるようになりました。

 

 


 

現在実施中の事業の概要

(このたび、イラク国内避難民のための小学校建設を行うことになったため、事業内容が2015年8月6日より変更されております。)

 

 

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事業名:「イラク共和国北部のキャンプ外難民児童に対する教育支援フェーズⅢ」

 

期間:2015年3月30日~2015年12月31日

 

目的:イラク北部クルド自治区のキャンプ外に住む、国内避難民およびシリア難民の子どもたちに対し、教育の機会を提供する。

 

活動内容:

1)イラク国内避難民の子どもたちで、二次避難した先が学校から遠く、学校へ通えていない子どもたちのために徒歩圏内に補習校1校を開設し、運営する。(4月~8月)

 

 

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(上の写真:補習校でのアラビア語の授業。先生も子どもたちと同じ避難者。2015年7月29日)

 

2)1)の補習校を公立校にするための支援と校舎の建設を行う。 校舎は最低300人の児童を受け入れられる規模とし、教室9、職員室2、トイレ、手洗い場、水タンク、倉庫、塀等を備えた校舎を建設する。(8~12月)

 

3)2014年9月に弊団体のサポートによって開校したシリア難民専用のコバニ小学校の体育、美術、音楽の担当教師自身が指導方法・技術を習得し、指導案の改訂を行う。(3~5月)

 

4)3)の小学校に通う児童に通学バス支援を継続して実施する。(3~5月)

 


 

 事業開始前の状況・現在の状況

 

 

シリア難民の子どもたちが置かれていた以前の状況

2011年のシリア内戦開始から4年近くが経過し、シリア難民の方々も避難先での生活に慣れてこられました。

 

しかし、避難の長期化に伴う先の見えない生活にキャンプ外難民の多くは、特に子どもたちの将来に大きな不安を抱えていました。 クルド自治区内ではクルド語での学校教育が主流のため、シリア難民が希望するアラビア語学校は少なく、多くの難民が暮らしている住居費の安価な地域にアラビア語で授業が受けられる小学校はありません。

 

その結果、2014年1月時点で、アルビル県のキャンプ外には、推定で約7000人の小学生年齢のシリア難民の子ども達がいましたが、学校に通えていた子どもは約1800人(26%)で、残り5200人(74%)もの子ども達が学校に通えていませんでした。

 

現在の状況

このギャップを埋めるために、他団体と協力してクルド教育省に働きかけを行い、9月の新学期に合わせてIVYが開校を支援したコバニ小学校を含めて、3つの小学校が開校。通えていない子どもの数を74%から47%まで減らすことができました。

IVYでは、開校後も引き続きこの小学校の教員に対し、体育、美術、音楽の指導トレーニング、子どもたちに対し通学バス支援を継続して実施して、子どもたちは無事、1学年を修了することができました。(2014年9月~2015年5月)

 


 

イラク本土から避難している子どもたちが置かれていた7か月前の状況

昨年6月の武装勢力によりモスル陥落以来、現在まで300万人の国内避難民が発生し、クルド自治区内にも86万人以上が避難してきています。

2015年1月12日の状況としては、アルビル県には国内避難民の児童・生徒が33,900人いましたが、政府による臨時校の開校が始まったばかりで、学校に通えていない子どもが2万3,000人おり、開校した学校も週3日の授業で、教室も定員オーバーで過密状態という状況でした。

 

このような状況をふまえ、少しでも未就学児を減らせるよう、避難先から学校が遠くて通えない子どもの多い地域に補習校、公立校をつくる事業を展開することにしました。

 

現在の状況

8月現在、イラク教育省アルビル事務所の報告によると74校の臨時校が開かれました。 しかし、ほとんどが賃貸の家やアパートを改造しただけの教室で、小学校は週3日しか授業がなく、教室もすし詰め状態で、子どもたちが落ち着いて学べる環境ではありません。

 

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(写真上:補習校では、普通の住宅を学校がわりに使っていたため、こんな狭い部屋も使うしかなかった。)

 

そこで、この状態を少しでも緩和し、子どもたちが普段の暮らしを少しでも取り戻せるよう、補習校の近くに土地を借りて、9教室を備えた国内避難民専用である小学校のプレハブ校舎を建設しました。当初の計画では小学校だけでしたが、女子中学・高校も開校することになり、午前中は小学生405人、午後は中高生141人がこの校舎で学んでいます。非常にきれいな仕上がりとなり、教育省からはこの校舎を今後のモデルにしたいと、高く評価いただいています。

 


 

【建設された公立小学校の概要】

・建設予定地:イラク共和国クルド自治区アルビル県

・敷地面積:約6000㎡

・床面積:642㎡

・設備:9教室、職員室2、トイレ男女各3、手洗い場、水タンク、倉庫、塀

・総建設費;1327万2750円(US$1=125円で換算)

・今後の運営・管理:イラク教育省(2015年12月までIVYによるモニタリングサポートを実施)

 

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授業中男の子たち私服

 

(左の写真:10月29日に開校した小学校。) (左の写真:真新しい教室でうれしそうな児童。)